
女心って複雑ですよね、ほんと。
なんていうと美化された表現のように聞こえますが。
はっきり言って、ただの面倒くさい女なのでありますまったくもう。
ほとほと自分でも嫌になってしまいます。
実家に帰ります、なんて言っているくせに、帰る気なんて微塵もないわけです。
それならそんなこと言うなと言われても、ぐうの音も出ません。
我ながら、盛大に突っ込んでやりたいくらいです。
それでも、どうしても、期待せずにはいられなかったのです。
いつかどこかで見たような、トレンディ―ドラマさながらの展開を。
「もう帰る」なんて言う女を、「ちょっと待てよ」とか言って男が引き留めるという、お決まりのくだり。
しかし、現実はそんなに上手くはいかないものです。
かといって、おっとは「勝手に帰れ」なんて怒り出すわけでもありませんでした。
ただただ優しい、という斜め上の切り返し。
疲れているみたいだから、実家でゆっくり休んでほしいと、気遣ってくれたのです。
本当にありがたいことです。
なんて心根の優しい人なのだろうとつくづく思います。
だがしかし、いかんせんあの時の私は、そんな思いに浸る余裕もありませんでした。
予想外の展開に、戸惑うばかりでした。
この時点で素直に謝ればよかったのです。
どうして粘ってしまったのだろう。
それでもなお、おっとは優しかったのです。
今度は帰り道の心配までしてくれました。
それなのに、私はもう引き返すことができませんでした。
最後の最後まで、私の中のくだらないプライドが邪魔をしたのです。
こうして、わざわざ時間とお金をかけて、少しだけ遠方の実家へ帰ることになってしまいました。
あまのじゃくも、意地っ張りも、どちらもいいことなんて一つもありません。
わかっているはずなのに、どうしてそんなことをしてしまうんだろう。
後悔は尽きないけれど、この気持ちだけは大切にしようと改めて思うのです。
優しすぎるくらいに優しいおっとと、夫婦になれたことを感謝します。
そして、そんなおっとに相応しいつまになれるよう、日々精進します。